アナログ派ギタリストのためのHelix実験室

第7回 Helix オリジナル・ペダル製作実験

2020.03.26

Idonuma main

無類のアナログ/ビンテージ機材好きライターによるHelix導入事例と、日常的なトライ&エラー(実験)を追う連載の7回目。今回のテーマは、「オリジナル・ペダルの製作」です。そう、Helixなら簡単に自分だけのエフェクト・ペダルを作ることができるのです、たぶん。

Helixなら夢のペダルも作れちゃう!?

いきなり私事から失礼します。最近子どもが生まれまして、妻の体調もまだ万全ではないため、私が料理を作ることがあります。基本的にメニューは2種類でして、「何かを口に入る大きさに切って、鍋に入れて煮る」か、「何かを口に入る大きさに切って、フライパンに入れて炒める」です。……すまん、家族よ。もっと違う鍋とかフライパンがあったらなぁ(考え方が間違っていますね、笑)。

これと同じようなことが音作りでもありまして。自分はペダル好きであれこれ買うくせに、出てくる音はいつもだいたい同じような感じです。根本的な原因は機材ではなく私自身にあることはわかっているのですが、そこには目をつぶり、ペダルを買うだけでは飽き足らずに「ああ、自分にもペダルが作れたらなぁ」などと妄想してしまいます。例えば……。

「Ibanez® TS808 Tube Screamer®が好きなんだけど、もっとローが欲しいんだよなぁ。ローだけElectro-Harmonix®のファズみたいにゴツンと出るTS、ないかなぁ?」

ありません。ありませんが、Helixなら作ることができると、気がつきました! 今回は、その方法をお伝えしましょう。

Helixは、信号のラインを簡単に並列にできることはもうご存知ですよね? ご存知ないという方は、すぐにHelix Expertが在籍する楽器店に行って教えてもらってください。びっくりするほど簡単にできますよ。で、問題は信号の分岐点です。こんな感じのプリセットがあったなら……

今回の音作りの全体像です。

白い丸の中、道が分かれていますね? ここが“スプリット・ブロック”です。

実は、Helixはこの部分で信号をどのように分けるか、選べるんです。下の写真をご覧ください!

Splitの選択肢として、Split Y、Split A/B、Split Crossoverの3つがあります。

Split Yは、信号の左右がパスA(アッパー)およびB(ロワー)へ均一に送られます 。 まぁ、普通はこれを使うことが多いです。Split A/Bは、信号をパスAおよびBに別々の量で送れます。これも実は便利で、要はSplit Yが「A/Bボックス」だとすれば、このSplit A/Bは「ブレンダー」だと考えてもらえばいいのかな、と思います。これをうまく使えば、前回実験した“デュアル・アンプ”で、アンプの比率を変えたりできそうです。

で、ここからが今回の本題。Split Crossover! これは任意の周波数を設定し、その周波数より高い信号はパスAへ、低い周波数はパスBへ送るというものです。これをうまく使えば、「高域はオーバードライブ、低域はファズ」も夢じゃないはず! 早速、やってみました。

周波数の設定がポイントです!

いろいろと試してみたのですが、実験ではSplit Crossoverの周波数をいくつに設定するかが非常に重要でした。設定が悪いと、エフェクトのノリが良くなかったり、ギターの高域と低域に別にかけたペダルの分離が悪かったんです。ここでは、下写真のように110Hzの値を採用しました。皆さんも、まずはここの近辺から始めてみることをお勧めします。

Frequencyの上のところが110 Hzになっています。ここ、めちゃくちゃ広く設定できるので迷うかもしれません。迷ったら、110くらいから始めてください。

この状態で、まずエフェクト・モデル「Scream 808」を選択しました。TS系のモデルで、クリーミーなローゲインが心地良いですが、低域の押し出しは若干不足しがちです。そこで、パスB側にのみ、「Triangle Fuzz」というファズ・ベースのエフェクト・モデルを加えます。

Splitの前後に、計ふたつ、歪みを示すオレンジのブロックが並んでいます。

これで、「Scream 808」がかかった110Hz以上の信号と、110Hz以下の信号には「Scream 808」に加えて「Triangle Fuzz」がかかった状態にスプリットされ、アンプの手前でマージされます。高域はマイルドでローゲインだけど、低域はザラついて重いサウンドの完成です! 音域ごとにペダルを分けただけでなく、フットスイッチひとつにアサインして「Triangle 808」と名付けてみました。これ、もう私のオリジナル・ペダルと言っても良いのでは? ひゃっほう~っ!!

さらにさらに! 「帯域ごとに歪み方が違う」だけではいまひとつ地味なので、もっとド派手なオリジナル・ペダルも作りました! こちらはなんと、低域側はフィルター系の「Seeker」で、高域側はモジュレーション系の「Chorus」という異種格闘技系ペダルです。

系統が異なるモデルを表すブロックが、上下に並んでいます!

これは低域は「グジュグジュグジュグジュ……」、高域は「キラーン!」ですから、先ほどの「Triangle 808」よりずっと効果がわかりやすいと思います。こちらもふたつのエフェクト・モデルをひとつのフットスイッチにまとめて「Seek Chorus」と名前をつけました。本当に、こんなペダルは他にはないですよ! それでは、動画をご覧ください!

途中から「Triangle 808」をアクティブにすると(0:43~)低域のニュアンスが変わります。にしても「Seek Chorus」……最高じゃないですか?

いかがでしたか? この方法は、まだまだ深く掘り下げることができますし、あなただけの強烈なオリジナル・ペダルを作ることもできると思います。Helixを愛用している方は、ぜひ試してみてください! それでは、次回もお楽しみに!

※記事中の写真、動画は、記事の理解を促すために筆者が個人的にスマートフォンで撮影したものです。必ずしも十分なクオリティではないかもしれませんが、何卒ご容赦ください。


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Ragos、写真中央が筆者

井戸沼 尚也(いどぬま なおや) プロフィール
Ragos、Zubola Funk Laboratoryのギタリスト。元デジマート地下実験室室長。フリーランスのライターとして、活躍したり、しなかったりしている。

◎Twitter: https://twitter.com/arigatoguitar

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