TIPS/テクニック

鈴木健治の「ギターレコーディング・マスタークラス」 第5回

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エフェクト処理前のドライ音を同時に録音

こんにちはギタリストの鈴木健治です。
ギターをレコーディングする時のアイデアやTipsを紹介している「ギターレコーディング・マスタークラス」今回で5回目を迎えることが出来ました。これからも実際に使えるアイデアを紹介して行きます。どうぞご愛顧くださいませ。

ドライ音を別トラックに録音
今回は、ギターをレコーディングする時に歪みやエフェクト処理された音と、ギターから出た素の音=全く処理されていないドライ音を、同時に別トラックにレコーディングするアイデアを紹介します。通常のレコーディングでは弾いた音色がそのまま録音されるので、そこから大幅に音色を変える事は出来ませんが、ドライ音を別トラックに録音することで、リアンプ処理も可能になり後から音色をじっくり決めることが出来るんです。

*リアンプ 録音済みの音をレコーダーからアンプに入力して音作りする事。通常はギターからのダイレクト音を使用しリアンプした音を再びレコーダーに録音します。
さらに詳しくは、こちらのブログ記事「リアンプとは、そしてそのススメ」をご参照

レコーディング後に音を変える利点

普通にレコーディングされた音はイコライザー等で音を整える事は出来ますが、歪んだ音をクリーントーンにする事は出来ませんし、掛け録りしたディレイ音をカットする事も出来ません。
しかし、ギターからのダイレクト音を録っておけば、後からアンプを選んだり、歪みを加えたり、空間系のエフェクトを掛けたりと、自由に音作りする事が出来るんです。

例えば、デモ段階のタイミングでギターレコーディングした後に、打ち込みだったドラムが生ドラムになったり、ベースも生に差し代わるような事はよくあるケースなのですが、そのような場合始めに録ったギターの音が生のリズム隊に音圧で負けてしまったり、相性が今ひとつになってしまう事もあるんですね。

そういう時にはリアンプ出来るようダイレクト音を録っておくことで、後からいくらでも音色を変えられるので、このようなケースにも対応出来ます。

もちろんフレーズ自体は「録ったまま」ですので、2度と弾けないような絶妙なニュアンスでも後から安心して音作りだけに集中する事が出来るんですね。

録る時は気持ちよく
ギターからのダイレクト音を録音しておけば、後から自由に音作りが出来るのですが、ギターからのダイレクト音のみ聴きながら例えばロックなギターソロなんかはかなり弾き難いものです。
そのために歪んだり空間系をたっぷり掛けた音も同時にモニターしながら、ダイレクト音を別トラックに録音する事で、録りの時は気持ちよく弾く事が出来るんですね。

Line 6 HelixならUSBケーブル一本で全て対応できます
ここは様々なルーティングに対応出来るLine 6 Helixの利点なのですが、まずHelixはUSBオーディオ・インターフェースとしても使えるので、今まで書いたダイレクト音とエフェクト音を同時に別トラックに録音して、ダイレクト音のみHelixに戻しリアンプ処理した音をDAWに録音する事が出来るんですよ。
しかもこのような複雑なルーティングも、ギターからのケーブルとUSBケーブル1本だけで出来てしまうのです。これはセッティング的にもかなりシンプルですし、一度Helixに入った信号はデジタルのまま処理されますので、音質劣化の心配もありません。

実際にやってみましょう
ここではLine 6 Helix Rackを使いますが、Helix FloorやHelix LTでももちろん同じ事が出来ます。
PCとHelix RackをUSBケーブルで繋ぎ、Helixをオーディオ・インターフェースとして使うようPC側で設定します。
DAWはCubase Pro 9を使用して、使用するオーディオ・インターフェースでLine 6 Helix Rackを選びましょう。
その他の詳しい設定は製品マニュアルの「USBオーディオ」の章をご覧ください。
一度設定して保存してしまえば簡単に再現出来ます。

今回使用した音色
今回使用した音色はLine 6 CUSTOMTONEにアップしていますので、ユーザーの方はダウンロードしてご自由にお使いくださいね。
Tone Name: GuitarRecTips5

まとめ
このようにダイレクト音を同時に録音する事で、後で音色を決められたりと、色々と出来る事を紹介しました。
録る時は空間系も含めて気持ちよく弾けるのは、演奏するテンション的にも良い効果がありますし、ドライ音を使って客観的な音作りも可能なこのアイデア、是非チャレンジしてみてくださいね。
では今回は以上になります。

では!


著者プロフィール:鈴木健治(すずきけんじ)
Kenji Suzuki

ギタリスト、ギターサウンドデザイナー、トラックメーカー。
神奈川県出身。
10歳でギターを始める。
20歳でプロとしてのキャリアスタート。
以来、スタジオミュージシャンとして、宇多田ヒカル、MISIA、BoA、EXILE、倖田來未、SMAP、安室奈美恵、坂本真綾、ケツメイシ… 他沢山のアーティストの作品に参加。その数は1000曲を超える。
キレのあるリズムギター、歌う様なリードギターは、1990年代後半~2000年代のJ-POPでのギターアプローチに多大な影響を与える。
2018年でプロミュージシャン生活30年を迎える。

ギタリスト鈴木健治オフィシャルサイト

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