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TIPS/テクニック

鈴木健治の「ギターレコーディング・マスタークラス」 第7回

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クリーントーンの理解と使い分け

こんにちは。ギタリストの鈴木健治です。
ギターをレコーディングする時のアイデアやTipsを紹介している「ギターレコーディング・マスタークラス」
7回目の今回は「クリーントーンの理解と使い分け」と題して、エレキギターのクリーントーンについて、いくつかの音色を使いながら考察していきます。

エレキのクリーントーン

エレキギターである以上、ギターアンプから出た音まで含めてが「エレキギターの生音=クリーントーン」で、何にも繋がないギター本体の音は「素材」であると僕は捉えています。
もちろん素材の音が「アンプまで含めたエレキの生音」にも影響を与えるものですが、それはあくまで素材のひとつとしての範囲で、他の事、例えばアンプの種類などに比べると、アンプからの出音(でおと)に与える影響は少ないものです。

一方アコースティックギターに視点を移して見ると、完全に「素材の音=生音」になります。
弦を弾いて発せられた音が、空気を揺らしながら耳に届くのが、まさに生音なんですね。
何か間違い?が起きない限りアコースティックギターの音が空気中で歪む事はまずないので、いつでもクリーントーンと言う事が出来ます。

クリーントーンはコードが濁らない

ここでクリーントーンの定義づけをしてみましょう。
アコースティックギターはいつでもクリーントーンなので、ローコードのCやAはもちろん、その他テンションコードを弾いても音が濁る事はありません。(意図的に濁らす事はありますが)

エレキの場合ですとアンプに繋いで、”クリーントーン”で弾けば、アコースティックギターと同じ様に、大抵のコードを弾いても音が濁ることはありません。
しかし、アンプのゲインを上げてクリーントーンから徐々に歪ませる事で、コードの音が濁って聞こえる様になります。特にテンションコードではそれが如実に現れてきます。

この濁る前までをクリーントーンと呼ぶことにしましょう。

[動画1:15] コードが濁らないクリーントーン
[動画1:58] 歪んでコードが濁る例

実は歪んでいるクリーントーン

フェンダーのツインリバーブから出る音には、多くの方がクリーントーンをイメージするかと思います。それはある意味正しいイメージなのですが、実際にギターアンプから出る音は多少なりとも歪んでいる事が多いのも事実なのです。
先ほどコードが濁らないのがクリーントーンと定義しました。
ではツインリバーブから出るあのクリスピーな音は、歪んでいるのにクリーントーンとイメージされるのは何故でしょうか。

実はギターアンプのスピーカーにもポイントがあるのです。

ギターアンプのスピーカー

ギターアンプに使われるスピーカーのほとんどは、オーディオ的に見ると再生可能な周波数レンジが狭いもので、ピックアップ付きのアコースティックギターをギターアンプに繋ぐと、本来のきらびやかな高域は再生されず、アコースティックというよりエレキに近い雰囲気になってしまいます。
この周波数レンジの狭さがギターアンプの大きな特徴のひとつで、再生可能レンジが狭い分、アンプ部で生じた少しの歪みをうまくマスキングして、人の耳にはクリーントーンと認識させるのです。
オーディオ的に見ると音を劣化させているとも言えるんですね。
もちろん楽器として考えれば、劣化ではなくエレキらしさを出しているのですが。
これを「少しだけ歪んだクリーントーン」と定義しましょう。

スピーカーを鳴らさないギターアンプ

真空管アンプで少しだけ歪んだ音を、スピーカーが鳴る前の段階で聞く事はほぼ不可能と言えるでしょう。しかし、Line 6 Helixを使えば簡単に聞く事が出来きるんです。
Helix上のギターアンプモデルの後にHXキャビを繋げなければ、その音を確認する事が出来るのです。
実際にUS Deluxe Nrmを、HXキャビに繋ぐ音と繋がない音とで聞き比べてみましょう。

[動画 3:21] スピーカーを通した音

[動画 4:04] スピーカーを通さない音

スピーカーに繋ぐ前の段階ではバリッと歪んでいる音が、スピーカーを通す事でうまく馴染んでいるのが分かりますね。
これはエレキらしいクリーントーンの秘密のひとつでもあるのです。

ギターアンプでは出せないラインのクリーントーン

ギター用のスピーカーに繋ぐ事でエレキらしさが作られるのですが、それを逆手にとって、あえてスピーカーを鳴らさない「ラインのクリーン」の良さもあります。
クリーンなトランジスタアンプをモデリングした、Jazz Rivetをスピーカーを通さず聞いてみましょう。ギターアンプらしさからは遠ざかっていますが、クリアでレンジが広いクリーントーンを聞く事が出来ます。
これは「歪みの全くないクリーントーン」と言う事が出来ますね。

[動画 5:17] スピーカーを通さないクリーン

この音にコーラスやディレイで広がりと厚みを加えてみましょう。

[動画 6:05] エフェクトを加えた音

確かにエレキギターの音なのですが、透明感のあるクリアなトーンが聞けます。
こういった「ラインのクリーン」もHelixでなら簡単に再現する事が出来るんです。

クリーントーンの選択と使い分け

ギターレコーディングにおいて、「少しだけ歪んだクリーントーン」と「歪みの全くないクリーントーン」を使い分けるのは、アレンジする上でとても有効な手段です。さらに、トレブリーなのかファットなのか、ミドルが目立つのか等、一括りにクリーントーンと言っても多くのトーンがあるので、その使い分けを意識する事でサウンドメイクの幅も広がるでしょう。

この点についての詳細は、第3回「クリーントーンのバリエーション」で解説してますので、是非チェックしてみてください。

まとめ

今回はエレキギターのクリーントーンについて、実例を挙げながら考察してみました。
ともするとドライブトーンよりも軽く見られがちなクリーントーンも、探ってみると意外と奥深いものです。
加えてレコーディング環境では、こうした実機ではできないようなアプローチを追求することで、クリエイティブなトーンを生み出すことも可能になります。
Line 6 Helixを使い様々なクリーントーンを探してみてはいかがでしょう。

今回は以上になります。

では。


著者プロフィール:鈴木健治(すずきけんじ)
Kenji Suzukiギタリスト、ギターサウンドデザイナー、トラックメーカー。
神奈川県出身。
10歳でギターを始める。
20歳でプロとしてのキャリアスタート。
以来、スタジオミュージシャンとして、宇多田ヒカル、MISIA、BoA、EXILE、倖田來未、SMAP、安室奈美恵、坂本真綾、ケツメイシ… 他沢山のアーティストの作品に参加。その数は1000曲を超える。
キレのあるリズムギター、歌う様なリードギターは、1990年代後半~2000年代のJ-POPでのギターアプローチに多大な影響を与える。
2018年でプロミュージシャン生活30年を迎える。

ギタリスト鈴木健治オフィシャルサイト

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