TIPS/テクニック

Line 6デジタルワイヤレス最適運用ガイド

残念ながら、どんなワイヤレス・システムにおいても100%エラーが起きないという保証はできません。通常ワイヤレス・システムは、距離が離れ過ぎたり他の電波の干渉で信号がマスキングされたりすることで受信状態が悪くなると、正常に動作しなくなります。
しかしながら、Line 6のデジタルワイヤレス・テクノロジーを使えば、アナログワイヤレスのようにオーディオ信号に外部からのノイズが混入することはなく、データエラーによってクリップやノイズ音が発生することもありません。トランスミッターからのシグナルが受信できない状態になると、その問題の原因(範囲外、過剰な干渉、電池切れ等)に関わらず、単にオーディオ信号がミュートされることになります。
つまり、そういったミュートが起きる原因を理解し、その可能性を最小化することで、ワイヤレスによる自由なパフォーマンスを十分に謳歌できるようになるのです。
以下、そのための主なポイントをご紹介します。

■チャンネルの選択

Line 6のデジタルワイヤレスシステムが動作する2.4GHzのISMバンドはWi-FiやBluetoothのデバイスとも共有されていますが、Wi-FiとBluetoothでは周波数の使い方が異なっており、Line 6デジタルワイヤレスとBluetoothは、通常問題無く共存できます。Wi-Fiが同じ環境で使用されている場合は、使用する環境に適したチャンネルの選択が重要になります。
環境をよりシビアにチェックするにはスペクトラム・アナライザーを使用する方法もありますが、ほとんどのLine 6のデジタルワイヤレス製品はシステム本体にその機能を搭載しています。

guide1① RFステータスLEDディスプレイ

対応機種:Relay G30/50/55/90、XD-V35/55/75
レシーバー側に3段階または5段階のRFレベルメーターが搭載されています。このメーターは、トランスミッターと接続中は電波の受信状態を緑色のLEDで示しますが、トランスミッターをオフにした状態でチャンネルをスクロールすると、赤色のLEDが各チャンネル上のRFノイズのレベルを示します。最もLED表示の少ないチャンネルを選択します。

② チャンネルスキャン
guide2対応機種:Relay G70/75、Relay G90(RF2モード)、XD-V75(RF2モード)
レシーバーに搭載されたチャンネルスキャン機能により、RF環境をスキャンしてその結果をチャンネルごとに表示しますので、最もRFノイズの少ないチャンネルを選択します。
※Relay G10は自動的に最適なチャンネルを選択します。Relay G70/75は、オート/マニュアル両方でのチャンネル選択が可能です。

■トランスミッターの装着とレシーバーの設置

音切れ(ドロップアウト)やレンジ(伝送範囲)が狭まる原因には、以下のようなケースがあります:

・トランスミッターからレシーバー・アンテナまでの経路がクリアでない(直線的に見通せる関係が理想的)
・電波の反射や干渉が発生している
・壁や金属、人体、地面などにより電波がアッテネート(減衰)されている。
・レシーバーのアンテナの近くに電波(異なる周波数帯を含む)を放射しているものがある (インイヤーモニター、Wi-Fiルーター、DSP内蔵エフェクター、他のワイヤレストランスミッターなど)
・トランスミッターの近くに電波(異なる周波数帯を含む)を放射しているものがある(携帯電話など)
・屋外に比べて室内は距離が短くなる場合が多い

このため、以下の点に注意して装着/設置しましょう。

guide3●トランスミッター

ポイント: アンテナをブロックしない
・ハンドヘルド型 -> 底の部分を手で覆わない
・ボディパック型 -> ポケットに入れない、皮膚に接触させない
※トランスミッターをポケットに入れると、伝送距離が短くなる場合があります。ギターワイヤレスの場合はストラップ上にマウントするのがベストで、ケーブルへの負荷も小さくなります

●レシーバー

ポイント:設置場所に注意する
① ホイップアンテナ・タイプ
・可能な限り、見通せる位置にアンテナを設置する(リモートアンテナを使う場合を除き、レシーバーをラックの下部等に入れるのは避ける)

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・2本のアンテナを活用できるよう、トランスミッターとレシーバーを向かい合わせる

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・レシーバーのアンテナは90度の角度に開く

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② ストンプボックス・タイプ
・レシーバーをエフェクト・ボード等で、エフェクターと隣接して設置する場合、シグナルを遮らないように金属製のもの(例えば高さのあるエフェクターなど)を近づけすぎないようにする

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■RFモードの設定

対応機種:Relay G30/50/55/90、XD-V 35/55/75
これらの機種は、RF1、RF2という2種類のモードで動作し(旧バージョン製品を除く)、環境や用途に応じてパフォーマンスを最適化するために選択して使用することができます。
工場出荷時の初期設定はRF2になっており、それぞれ以下のような特徴があります。

RF1:各チャンネルで4または5つのキャリア周波数を使用し、干渉に対してより強い設計となっているため、電波環境が悪い状態でワイヤレス接続を優先して確保したい場合に最適
RF2:各チャンネルで2つのキャリア周波数を使用し、Wi-Fi環境と共存できるよう、Wi-Fiチャンネルが使用する帯域の隙間に位置する周波数が選ばれているため、両方の環境を維持する必要がある場合に最適

RF2モードは、上記のWi-Fiシステムとの互換性の向上の他、より多くのデジタルワイヤレスチャンネル(XD‐V75シリーズ、Relay G90で最大14)、より低レーテンシー(2.9msec未満)、のメリットを持っています。

但し、複数のLine 6デジタルワイヤレスシステムを併用する場合、同じ空間内で両モードを組み合わせて使用しないでください。両モードが混在すると、システム間での干渉が発生します。

・RFモードの詳細および各システムでの切り替え方法はこちら

Relay G70/75は上記とは異なるRF3モードを使用しています。運用に関する詳細は、アドバンスドガイド (PDF)をご参照ください。

■トランスミッターとレシーバーおよびWi-Fi機器との距離

これまでの説明の中で、アクティブなWi-FiチャンネルとオーバーラップするLine 6チャンネルは使用できないと考える方もいるかもしれませんが、そうではありません。Line 6デジタルワイヤレスシステムは、独自のデータ変換を行い、それ以外はノイズと見なすため、重要なのは電波のS/N比です。もちろんオープンな周波数帯が存在することが望ましいのですが、距離も重要な要素となります。一般的なルールとして、ワイヤレスのトランスミッターとレシーバー間の距離に対して、Wi-Fiルーターを4倍以上離すことで、使用されている周波数を問わず、お互いに影響を与えずに運用できるようになります。

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以上、Line 6デジタルワイヤレスを最適に運用するための主なポイントをまとめてみました。

さらに一部の機種(XD-V55/75、Relay G55/90)では、トランスミッター/アンテナ間の理想的な位置関係を維持するために外部リモートアンテナを使用する方法もありますので、こちら (PDF)も参考にしてみてください。

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