Helix

Transtronic - トランジスタ/ダイオードの特性の再現を可能にする技術

2016.01.08

ギタリストというのは「歪み」が大好きな生き物です。デジタルギター製品が世の中に登場する以前は、歪みを得るための機材には必ずダイオード及び/またはトランジスタが用いられていました。回路基板を見るとこれらは非常に小さなパーツなのですが、複雑で繊細な電子部品で、ギター音楽の歴史になくてはならない存在です。

この話題を続ける前に、その核心部分についてはもうずっとネット上で諸説語られている事をお伝えしておきますので、このブログの読者の方でこれらパーツが実際どのように機能しているか基本的な仕組みを知りたい方は、ウェブで検索していただければ沢山情報を得る事ができます。それ以外の方は、あくまで参考としてお読みください。

エフェクトペダル内のトランジスタとダイオードについて知るべきこと。それはこれら部品が回路内の小さな増幅器/ゲイン・ブースターまたはクリッパーとして使用されているという事だけです。それらはわずかな信号を増幅、またはクリップさせる役割を担い、ギタリストにはディストーションのかかったロックなサウンドに聞こえるのです。

回路内で動作する際、トランジスタとダイオードはたくさんの独特な特性がありますが、そのうちの一つは信号のレベルの変化に非常に敏感であるという点です。古いビンテージのファズ・ペダルであれば、ギターのボリュームノブがどの位置にセットされているかや、どのようにギターが演奏されるかで全く異なるサウンドになります。いくつかのモデルではギターのボリュームを下げると格段に音がクリーンになったり、また他のモデルでは反対に強烈に歪むこともあります。

これら部品はその構造だけでなく、使われている素材でもサウンドや動作に影響がでます。ゲルマニウムは、1947年ベル研究所がトランジスタを発明した際に採用した材料で、後に70年代になりシリコンを用いたタイプが主流になるまで、ずっとゲルマニウムが使われていました。

シリコンがゲルマニウムに取って替わった理由は、シリコンのほうが材料として優秀だったからです。温度の持続性が高く、ノイズもより少なく安定性が高いからです。ところが、実はサウンドや雰囲気も違っていました。シリコンに対しゲルマニウム製は、よりサウンドが「ルーズでスムーズ」と表現される事が多く、また音色もより繊細で粘りがあると言われています。どちらの素材も有効な使い方があり、ギタリストの好みも半々に別れるところです。もし体調が悪く自宅で寝込んでいて暇を持て余しているなら、ネットで良く利用するBBSで「シリコン vs ゲルマニウム」論争を始めたら暫くは楽しめるでしょう。

これら素材を用いて特定のペダルをデジタル的に再現しようと試みるエンジニアにとっては、トランジスタは真空管のようなものです。信号レベル、または電圧・電流のほんのわずかな変化で異なった反応を示します(構成要素が複雑であればあるほど、デジタル的な再現は困難になります)。この事が、これまでクラシックなディストーションやファズ・ペダルをデジタル的に再現するにあたっての難題でした。再現を忠実に行うには、本物のように反応するトランジスタとダイオードそのものをまず再現し、バーチャルな回路内を詳しく測定する必要があるでしょう。

HelixのHXモデルはまさにこの過程、Transtronicの創造を経て完成しました。

このTranstroicの技術によりHelixは、ゲルマニウム製かシリコン製か、PNPかNPNかにかかわらず、あらゆるタイプ、またはスタイルのトランジスタ及びダイオードの特性を再現することができました。これまでは不可能と考えられていたペダルのモデリングも可能にし、まるで本物のようなサウンドを実現しています。Industrial Fuzzは設定によって、全ての歯を擦り合せたようなサウンドを出し、ボリュームを下げてもハードウェアと同じように動作します。Octave Fuzzはビンテージモデルそのもので、ネック・ピックアップに切替えギターのボリュームを下げればクラシックなジミヘンのトーンを得られる事を知っているギタリストは、そのリアルな60年代のサイケデリックなトーンに感激するでしょう。

TranstronicはHXモデリングの技術の一つにしか過ぎません。ディストーションやファズが好きな方は是非Helixをお試しください。現物で馴染みのあるアンプとペダルの組み合わせでその実力を確認してみてください。クラシックなエフェクトの忠実な再現力に驚かされるでしょう。なぜなら私たち達自身も驚いたぐらいですから。

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