ライブサウンド製品

ギタリストの夢が実現! Part 2 – Line 6 StageSource L3t & L3mレビュー

by Rowbi

このブログシリーズの 最初のポストを読んだ際に外れてしまったアゴは、もう元に戻せたでしょうか? M20dは“単なる”ミキサーですが非常に先進的な機能を装備する上、分かりやすく便利なので、こうした製品がこれまで無かったことが驚きです。でもLine 6はこうした製品の重要さを認識し、かつLine 6らしく最初に発表しました。

Line 6 Dream Stageをギタリストの視点から紹介するブログの第2弾では、StageSource L3tとL3mという、似通った2種類の製品を取り上げます。両者には同じ機能も用意されていますが、L3tには内蔵エフェクトやEQ、楽器/マイクの専用入力などの追加機能が幾つか用意されており、価格も少し高くなっています。

多くのPAスピーカーがFRFR (フルレンジ、フラットレスポンス) を謳っています。実際のところ、大半のPAスピーカーは全く同じサウンドというわけではないので、本当の意味でのFRFRとは言えないでしょうが、可能な限りFRFRになるようデザインされています。L3t/mスピーカーが興味深いのは、その動作に数種類のモードが用意されていることで、これはSmart Speakerモードと呼ばれています。Reference/PAモードはフラットな特性を謳っており、スペック・シートによると、このモードの周波数特性はフルレンジになっています。大抵のPAスピーカーが同様に動作しており、POD HDを接続する場合も通常はフルアンプ・モデルとStudio/Directアウトプットを使用します。もちろんアウトプット・モードは他のものを使ってもいいですし、プリアンプ・オンリーのアンプ・モデルも使えますが、フルレンジ・システムでは意図通りのサウンドにはならないでしょう。

speaker_modePOD HD (HD500や、私がテストしたHD Pro) をL6 LinkケーブルでL3t/mへ接続すると、面白いことにSmart SpeakerモードはElectric Guitarへ、またPOD HDのアウトプット・モードはPOD HDでプリアンプ・モデルを使うのに最適なCombo Power Ampに設定されます。それを念頭に置いてリハーサルの際、L3t/mをReference/PAモードにしてPOD HD500のフルアンプ・モデルをStudio/Directアウトプットで使った場合と、L3t/mをElectric GuitarモードにしてPOD HDのプリアンプ・モデルとCombo Power Ampアウトプットにした場合を比べる、ちょっとした実験を行ってみました。結果としては、トーンには微妙な違いがあるものの、どちらが好みかは決められませんでした。その際に驚かされたのは、L3シリーズのスピーカーは低域も非常に充実しているということです。本題に戻ると、ReferenceモードはLine 6が最高のオーディオ・コンフィギュレーションとしてデフォルトに設定しているわけではないものの、私にはそれがギター・トーンの妥協であるとは感じられませんでした。もちろんギグの際、様々な楽器に使用するにはStageSourceスピーカーをReference/PAモードに設定する必要がある場合もあるでしょうから、どちらにしてもトーンに関して悩む必要が無いので安心しました。

(編注: POD HD500/500X、POD HD Pro/Pro Xの最新ファームウェアでは、StageSourceスピーカーとL6 Linkで接続した際、POD HD側の初期設定はStudio/Direct、StageSourceスピーカーはReferenceモードになるよう変更されています)

rowbi2_03StageSourceスピーカーをデイジーチェーンできるのは、本当に最先端の機能です。私のようにPAをセットアップする必要がある人は、PAアンプから各FOHスピーカーやステージ・モニターへ別々のケーブルを接続するのがどれほど面倒なことか、お分かりだと思います。Line 6のStageSourceスピーカーを使えば、それも過去の話です。L6 Linkはマルチチャンネルのデジタル・オーディオを1本のケーブルで伝送できるため、M20dスマート・ミキサーやPOD HD、あるいは最初のStageSourceスピーカーから次のスピーカーへ、L6 Linkで接続するだけで済みます。1本のL3tと、内蔵ミキサーとDSPでドライブされたエフェクトを使っている場合は、L3mスピーカーを追加するだけで、そのミキシングされエフェクトをかけられたシグナルをさらに増幅できます。また方向センサーが搭載されているため、L3t/mを横向きに設置した場合はそれが認識され、L/Rのシグナルはモノへサミングされます。このように、非常にフレキシブルなスピーカー・システムになっており、またコストパフォーマンスにも優れたセットアップです。

rowbi2_04こうしてL3t/mはモニターとして使うこともでき、そのために2種類の方法が用意されています。2本のキック・スタンドを使って一定の角度に設定でき、キャリーハンドルを使うと別の角度にも設定可能。一方はモニターの前に立つと最適な角度、もう一方はモニターから2m以上離れた場合に適しています。でも方向センサーの働きは、それだけではありません。フロア上にダイレクトに立ててある場合はビーミング・テクノロジーを活用し、サウンドを真っすぐ足に向けて送るのではなく、わずかに上向きに傾けることで耳の方向に向けてくれます。クローズド・ギター・キャビネットのそばに立ってアンプの設定をした際には、後ろに下がると全く異なるサウンドになってしまいますが、この機能がうまく機能するため耳の方に音が送られるのです。L3t/mをポールにマウントしたり天井にマウントしたりした場合には、スピーカーが必要な方向に向けられていると判断され、ビーミング機能は無効になります。

L3tの内蔵ミキサーには幾つもの素晴らしい機能が用意されており、例えばリバーブは小さな会場でのギグでテストした際に素晴らしい効果を発揮しました。アコースティック・シミュレーターはピエゾ搭載のエレアコを生き生きとしたサウンドにするには素晴らしい役割を果たす一方、エレクトリック・ギターのサウンドを素晴らしいアコースティック・サウンドにするには不十分ですが、セット中のアコースティック・トラック1曲だけに使うには問題ありませんでした。もちろん、こうした使い方を意図した機能ではありませんが、アコースティック・シミュレーターとすると、エレアコ・ギター専用の機能とは考えづらいかもしれません。恐らく「エレアコ・エンハンサー」のような名前の方がいいでしょう。

L3tに搭載されたフィードバック・サプレッションも興味深い機能なので、私独特のテストをしてみることにしました。セットアップはShure SM58をL3tへ接続し、マイク・ゲインは90%程度、マスター・ボリュームは35%に上げて、マイクをスピーカーグリルから1.5mほど離れたところから3cmまで近付けてみるというものです。マイクがスピーカーの真横になると確かに少しフィードバックが起こりましたが、1m程度ではほとんど起こりませんでした。ライブの際にはこれほど近くに寄ることは無いでしょうし、テストのようにボーカル・マイクをフィードバックさせることも無いでしょうから十分合格です。

結論と言うと、Line 6はStageSourceスピーカーのデザインと製造において素晴らしい仕事をしたと思います。セットアップや操作も簡単で、PAから最高を引き出す便利な機能が搭載されており、不足している機能もほとんどありません。Line 6から貸してもらったユニットが気に入ったので、実際に製品を購入したいと思っているということが、何よりも評価を分かりやすく物語っていると思います。私はギタリストなので、ギター・アンプが好きなのです。

長所

ツアー対応の構造と移動に便利なハンドル、複数の革新的な機能を備える充実したスペック、最適化されたElectric GuitarモードはPOD HDユーザー向けにデフォルトで自動設定、L6 Linkデイジーチェーン、方向センサー、分かりやすさ。類似の製品と比較しても優れたバリューを実現。

欠点

アコースティック・シミュレートはむしろエレアコ・エンハンサー、ハンドルのデザインに助けられてはいるがかなり重い、シンプルなPAを求めている人には高価。小規模な会場やバンドは、より軽量で低価格なL2t/L2mの方を好むでしょう。

Rawbiのレーティング: 9.5/10 – その違いは耳で分かります

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本ポストは「Rowbinet – Rowbi’s Guitar & Recording Blog」に掲載された原稿を、著者の許諾を受けて転載したものです。

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