POD HD

POD HDのアンプ追加機能 – サグ、バイアス、バイアス・エクスカージョン設定の活用

2013.06.27

by Sean Halley

少し前にPOD HDのパワーアンプ・セクションへ加えられた追加機能を既にチェック済みだという人は、恐らくそれほど多くはないでしょう。これは細かいところを操作することが大好きな、少数派の人達を喜ばせるような機能であり、大した価値は無いと思っている人もいますし、その存在すら知らない、あるいはどう使っていいのか分からないという人もいます。

この記事では、そのディープなエディット用に用意されたサグ (Sag)、バイアス (Bias)、バイアス・エクスカージョン (Bias Excursion) という3種類のパラメーターを取り上げ、その操作に価値があることを紹介しようと思います。

各パラメーターの技術的背景についてはオンラインで提供されている様々な情報をご覧ください。Line 6のCommunity Forum (英語) でも貴重な情報が提供されています。

各パラメーターがどのように機能するかを深く理解したい場合は、上記のリンクや、さらにそのスレッド内にあるリンクを辿ることで技術的な情報が得られます。真空管と、それに関連する電圧や電流の知識が必要です。

ただし、単にどんな感じの変化が起こり、それがトーンを追求する際にどう役立つかを知りたいというだけなら、ずっと簡単に理解できます!

この記事では、ギターを演奏する際に、各パラメーターを変更することでアンプがどのように変化するかを、読者が体験できることを目標としています。ビンテージなVox® AC30® のEQ CUTノブの動作と同様で、ノブを回したときにどのように音が変化するかを理解できていれば、必ずしも何が起こっているのかを知る必要はありません。この記事ではビデオも用意していますが、ぜひご自身で実際に操作しながらサウンドの変化を体験しておいてください。それが自分のトーンを作るときにも役立つ筈です。

では、シンプルなパッチを作ってみましょう。ここではPOD HDをダイレクトにスタジオ・モニターのペアかヘッドフォンへ接続し、“Studio/Direct”モードに設定してステレオで聞いているものとします。

まずPOD HD内のデフォルト(初期状態)のパッチを選び (恐らく、使ったことのないUser Bankの中に残っているでしょう)、それをロードしてください。

次にアンプ・ブロック内にアンプを選択します。ここでは分かりやすいよう、私と同様にPlexi Lead 100 Brightアンプを選び、キャビネットとマイクのパラメーターはデフォルトにしておいてください。各アンプ・ノブの位置は、下の画面をご覧ください。

さあ、ギターを接続したらカーソルをアンプ・ブロックへ移動し、ENTERボタンを二度押しするとアンプのディープ・パラメーターが表示されます。ナビ・ボタンの右側を二回押してPage 2に行くと、以下のような表示になります:

sag50
サグのデフォルト設定

まず、この段階でもとのサウンドをチェックしておきましょう。各クリップではJTV-69がPOD HD Proへダイレクトに接続され、そのXLR出力がマイク・プリアンプのペアに送られて、そこから直接Pro Tools HDXへレコーディングされています。Pro Tools上ではプロセッシングやEQは行われていません。全てがPlexi Lead 100 Brightチャンネルで、JTV-69ではマグネティック・ピックアップを使っています。

全てのパラメーターがデフォルトの状態:

では、サグのパラメーターから始めましょう。その効果について、きっと読者も独自の表現をするでしょうが、私は“スポンジっぽさ”や“べたべた度”が適していると思います。周波数依存のコンプレッションにも似た効果が得られ、ピックの感度にも影響します。値を上げると、演奏時のスポンジっぽさも強くなり、コンプレッション感やグリット (汚れ)、サウンド内での結合感が生まれます。値を下げると、アンプの堅苦しい感じが強くなります。

サグのレベルを100へ上げたクリップ:

サウンド内で、さらにクランチ感が強くなったことに気付くでしょう (これは、ちょっと行き過ぎですね)。前の例と比較すると、Eコードがより一体化した感じになり、高音を弾いた音もそれほど抜けない感じになりました。

次のページのパラメーターに進みましょう。まずサグの値を50に戻し、ナビ・ボタンの右側を押してページ3にあるバイアスとバイアス・エクスカージョンを表示します。演奏している場合は、デフォルト状態のアンプのフィーリングを確認しておきましょう。

バイアス電流は、真空管の“アイドル”状態の動作を設定し、アンプの特性にも独自の影響を与えます。バイアスのデフォルト設定は50です。ギターを演奏していない場合は最初のクリップをもう一度再生して、アンプの特性を確認しておきましょう。

次のクリップはバイアスを41へ下げています。トーンは少し違っており、トップエンドが少し滑らかになり、高音で弾いた音符はより一体感が出ますが、サグを上げたときほどは明確ではありません。

バイアスを0に下げて同じ演奏をすると、その変化は明白です。Eコードの一体感はありますが、高音と弦のノイズがとても目立ちます。アンプの感触はずっと固い感じになり、各音がそれほどコンプレスされないので、ハイブリッド・ピッキングをする私には少し演奏しづらくなります。ただし、メタル・トーンにパンチを与えるには最適です。

サグとバイアスの2種類のコントロールだけで、アンプのフィーリングが大きく変わることがお分かり頂けたと思います。

今度はバイアスを50へ戻し、バイアス・エクスカージョン・ノブを動かしてみましょう。分かりやすく言うと、このパラメーターは真空管のバイアス補正が戻るスピードを決定します。これによってもトーンは大きく変わります。まずは、またデフォルト状態を確認しておきましょう。

ここでバイアス・エクスカージョンを100にして、同じことを演奏してみます。まるで、突然弦に金属成分が増えたような感じで、高音はスムーズになりました。

バイアス・エクスカージョンを0にして、繰り返してみましょう。バイアスを0にしたときにも少し似ていますが、弦が生み出すノイズが増え、高音は一体感があり、それほどはみ出すこともありません。

最後に3種類のパラメーターをカスタム設定したものを演奏してみます。

これまで紹介してきたビデオで、これら3種類のコントロールで実現できる変更についてはお分かり頂けたと思いますが、本当に使いこなすには自分で試してみるのが一番です。パラメーターを変えることでアンプの感触が変わり、それにより演奏も変わります。例えば私の場合はアンプがスポンジっぽくなると、よりギターを強く弾く傾向があります。各ビデオで私の右手に注意すると、どれくらいの強さで弾いているかも、ある程度は分かると思います。でも自分で演奏した方が、ずっと簡単に分かりますよ。

私にとってサグとバイアス、バイアス・エクスカージョンの3つのノブは、アンプのフロントパネルにあるEQノブと同じくらい重要です。フルモデルを使ってトーンを設定する際には、いつもそれを頭に置いており、アンプ・モデルを変更する際には、特にサグは常に調整しています。今では制作時のプロセスのひとつになっていると言えるでしょう。

これほどディープに調整できるパワーが用意されているということは、ライブ・サウンドにも役立ちます。ホームスタジオで時間をかけてトーンを設定したら、ギグの際にはそれを持ち出し、PAへダイレクトに送って使うことが可能です。POD HDユーザーなら、それを楽器店へ持ち込み、Line 6 StageSource L2スピーカーへ接続して、800Wのパワーでギター・サウンドがどのようなトーンを生み出すのかチェックしてみるといいでしょう。私は最近、幾つかのポップ・ギグをそのシナリオで行いましたが (実際にはL2を2台使いました)、素晴らしい成果が得られました。

StageSource L2tの情報はこちらです:

line6.jp/products/stagesource/

この情報がお役に立てば幸いです。では、また次回!

S..

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