ライブサウンド製品

ロードテスト: Line 6 StageSourceスピーカー & StageScape M20dデジタル・ミキサー

Written by Evan Hooton

line6speaker system自社の製品を「革新的なライブ・サウンド・ソリューション」、「初のスマート・ミキシング・システム」と謳うLine 6は、スピーカーやミキサーのマーケットでは新顔ですが、PODによって実現したギター・プロセッシングから高い評価を受けるXDデジタル・ワイヤレス・ユニットまで、テクノロジーにおいて長い歴史を持っています。それを心に留めて、新たなスピーカーとミキサーをチェックしていきましょう。

今回のレビューのため、私は最初のStageSourceスピーカー・システム (とStageScape M20dミキサー) のプロダクション・ユニットを手配しました。レビュー用のシステムはL3t 3ウェイ・トップ2本、L3sサブ2本で構成されており、このコンパクトながらスケーラブルなシステムにより、正確なハイとズシリとしたローエンドが提供されます。L3sサブの上にL3tを (ポールを使わずに) スタックすると、高さは173cmでした。というのも私は筋骨隆々とはしていない、身長173cmだからです。そんな貧弱な私ですが、ありがたいことにLine 6はデュアル12インチのサブにはホイールを装備し、トップはとても軽量 (26 kg) に作ってくれました。

必要な場合にはトップとサブ、ケーブル類とパワード・モニター2本、マイク・スタンド何本かとコンパクトなミキサーを日産エクステラ (北米で販売されるSUV) に収めて運ぶことができます。企業による小規模なスピーチのPA、カフェでのギグに対応でき、腰を痛めることなく、数百人をカバーするのに十分なシステムだと言えます。

ワン・フォー・オール&オールインワン

L3t (税込市場想定価格118,000円/1本) は1,400 Wのトライアンプ方式による3ウェイ・スピーカーで、デュアル10インチ・ウーファーと、その2基のLFドライバー間に置かれた1インチ・エグジットのコンプレッション・ドライバーというコンフィギュレーションになっています。キャビネット側面には2チャンネルのマイク/インストゥルメント・コンボ・ジャック入力 (-20 dB Pad装備)、XLRラインAUX入力、RCAステレオAUX入力、ミッドをスウィープできる3バンドEQ、各入力に12バンド・フィードバック・サプレッション、XLR出力、マスター・ボリューム、2系統の内蔵エフェクト・エンジン (各入力チャンネルにSmart ModとSmart Reverbを搭載)、ネットワーク用のL6 Link入出力ポートなどを備える統合マルチチャンネル・ミキサーを搭載。内蔵ミキサーが必要ない場合は、ミックス機能を省略した同サイズのスピーカー、L3m (税込市場想定価格98,000円/1本) が最適です。

L3tのポールマウントにはオプティカル・センサーが搭載されており、また内蔵される加速度センサーでスピーカーの方向が検出されます。これにより、“リファレンス”PAやフロアモニター、音楽プレイバック、またキーボードやアコースティック・ギター、エレキギターの楽器用モニターなど、6種類が用意されたDSPベースのSmart Speakerモードも選択されます。その全てをチェックしてみましたが、L3tを 使用したいシチュエーション全てに対応できるプリセットが用意されていると言えるでしょう。フロアへ横向きに置いた場合は、加速度センサーがフロア・モニ ター・モードに設定。ポール無しに垂直に設置した場合はバーチャル・ティルトバック機能が有効になり、音軸が上向きになるようスピーカー・チューニングが 最適化されます。そうした技術的な面はさておき、このL3tは正確かつハイエンドなサウンドのスピーカーであり、クリアで輝きを持ったハイエンドと47 Hz (-3dB) まで伸びた低域特性により、人気の高いキャビネットになるポテンシャルを有していると言えます。

重さ37 kgのL3sサブウーファー (こちらも市場参考価格は税込118,000円) は、体重200kg近い相撲取りを靴箱に収めような製品だと言えます。1,200Wバイアンプを搭載したデュアル12インチ・ウーファー搭載のバスレフ構造キャビネットを採用。この製品もSmart Speakerモードを搭載しており、リファレンスPAやDJシステムとして使用した場合に、どちらもベースを強化するモードが用意されています。アナログで入力した際にはクロスオーバー周波数をコントロールでき、80/100/120 Hzとオフから選択できます。ハイパスされた帯域はステレオ出力へ送られるため、そこからトップ・キャビネットの入力へダイレクトに接続可能。スピーカーをL6ネットワーキングで接続した場合は、クロスオーバーをStageScape M20dからコントロールできます。L3sを縦置きした場合のために1カ所、横置きした場合のために横に2カ所、合計3カ所のポールマウント・ソケットが用意。入力パネルには、極性スイッチとマスター・ボリューム・ノブを搭載。それにより、驚くほどのコントロールが実現します。

StagescapeM20dデジタル・ミキサー

このM20dミキサー (税込市場参考価格: 248,000円) はマイク/ライン・コンボ入力 x12、1/4” TRSライン入力 x4、1/8” ステレオAUX入力、USBまたはSDカードからのステレオ・ストリーミング、4系統のXLRモニター出力、XLR L/Rメイン出力を搭載しています。またSDカード・スロット、USB A/フラッシュ・ドライブ・スロット、PC/Macに接続できるUSB Bコントロール・ポートも搭載。全ての入出力端子は、オートセンス端子を採用してデジタル・コントロールされています。入力や出力の端子へ接続を行うと、高輝度の7イ ンチ・タッチスクリーンへマッチしたアイコンが表示。アイコンのタッチや移動、プリセット・ライブラリーからの選択、名前の変更によってバーチャル・ス テージをカスタマイズして、パフォーマンス空間を画面上に表現できます。とてもクールですね。学校や教会、バンドなど、初心者やボランティアが含まれる場 合、これは非常に有効なリソースとなるでしょう。入力ソースは常にビジュアルで表現され、画面上でアイコンを選択するか、画面下部のソース・リストからの 選択、または対応するノブのタップにより、そのチャンネルのエディット機能へアクセスできます。

各入力チャンネルには、プロセッシングへアクセスするために“Quick Tweak” と“Deep Tweak” の2種類のモードが用意されています。Quick Tweakモードでは、“Tone”とラベルされたEQのコントロール、“Punch”というダイナミクス・コントロール、グローバル・エフェクト・セクションなどが提供されます。このToneとPunchのセクションは、EQは ウォームやブライト、ディープ、ダイナミクスではパンチやオープンなど、サウンドを表現する用語が使われています。チャンネルをセットアップして望むサウ ンドを得る作業が、スクリーンにタッチして指を動かすだけで得られるのは、コンソールの前でショーをミックスする全ての人にとって素晴らしいツールとなり ます (ちゃんとした耳を持っている限りは!)。より先進的なユーザーには、Deep Tweakモードで、より慣れ親しんだインターフェースを提供。スウィープ可能なミッド4ポイント、ローシェルフ&ハイシェルフを備えた6ポイントEQが用意されているほか、ゲート、コンプレッサー、ダイナミックEQなどが全入力に用意されています。

また、18チャンネルのマルチトラック・レコーディング (16入力+ステレオAUXミックス) とメインL/RミックスをSDカード、またはダイレクトにMac/PCへ24-bit WAVフォーマットで出力可能。ミックスはiPadアプリとオプションのWi-Fiアダプターを使うことでもコントロールできます。iPad上にM20dがそのまま複製されるため、楽しく動き回りながらFOH及びモニター・ミックスをコントロールできます。

このM20dには、驚異的な2種類の機能が素晴らしいオプションとして搭載されています。まずは、チャンネル毎の独立したライン・チェックとしても、グローバルな機能としても使えるAuto Trim機能。トリムを設定したチャンネルを選択して、最大音量で演奏している間に “Start Analysis” を押せば、ミキサーが代わりに設定を行ってくれます。ゲイン・ストラクチャーは、学習すべき重要な基礎のひとつですが、新人をトレーニングする時間がないときには、とても助かる機能だと言えます。

deep_eqまた、EQ画面上のFFTア ナライザーにも驚かされます。私は機材に最初に触れるときにはマニュアルを読まないのですが、それはこうした機能を発見する楽しみが失われてしまうからで す。それに、エントリーレベルの“ユーザーフレンドリー”な機材の場合、マニュアルを読まなくてはいけないようでは、その機材をウェディング・レンタルや トリオによる小規模なカフェでのギグで、自分の目の届かないところに置くことはできません。教会で、ボランティアに委ねる場合も同様です。このデジタル・ ミキサーは、非常にユーザーフレンドリーであり、あらゆる経験レベルのユーザーにとって、とても分かりやすい機材に仕上がっています。M20dは全体的に非常に優れたミキサーであり、ウォームなトーンで、オペレーションに対して非常に正確に、かつ好ましい反応をします。

フィールド・テスト

私は、このL3スピーカーの能力にスポットライトを当てる3度のギグを行いました。最初は、L3tスピーカー2本とワイヤレス・ハンドヘルドによる、シンプルなコーポレート・セットアップです。L3tに内蔵される2チャンネル・ミキサーと、2本をL6 Linkで接続できるオプションを使うことで、一般的なスピーチと音楽再生の用途には、セットアップするだけで素晴らしい明瞭度を実現できました。L3tは魅力的なフルレンジの特性を持っているので、大きな変更は不要で、ローエンドを少しロールオフする程度で十分でした。そして2本のL3tと2本のL3sサブで構成したフルStageSourceシステムを持ち出したときには、コンパクトで高出力なシステムに目を見張りました。デュアル10インチのトップは十分な働きをしますが、ロックショーの場合は合計で4本を使用した方が良さそうです。唯一の注意点は、1” イグジットのコンプレッション・ドライバー/ホーンがL3tの中央に置かれているため、フロアにスタックした場合はホーンが胸の上あたりを狙うことになるため、その前を人が歩くとハイエンドが邪魔されてしまいます。この場合は、オプションのポールマウントを購入して、L3sとL3tの間にある程度の空間を作ることをお勧めします。

これは優れたサウンドのシステムだと言うことができ、EQするのも簡単でした。クリップ回路も透明で非常に大音量を出すことができますが、システムに適したサイズの環境で使用する際にはL3tから非常にクリスピーでトップクラスの明瞭度と精度を持ったサウンドが得られます。L3sも非常に効果的で、デュアル12” サブとは思えないほどパンチが効いてダイナミックなローエンド・サウンドが得られます。

さて、「革新的なライブ・サウンド・ソリューション」と「初のスマート・ミキシング・システム」という謳い文句は正しいものでしょうか? 私の評決は、正し い用途で使用する限り素晴らしい成果を提供する、コンパクトで簡単に使えるシステムというものでした。素晴らしい出来だと思います!

より詳細な情報: line6.jp、またはwww.fohonline.com/tv

このポストはFOH onlineに掲載されたレビューを許可を得て翻訳・転載したものです。オリジナルはこちら

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