製品レビュー
Line 6 DT50レビュー – Gearvolution (Part II)
By thesamurai
(このレビューは SIX-STRING SAMURAI に掲載された文章を、許可を得て転載したものです)
前回、このコラムでモデリングvs.真空管について書いた際には (英文のポストは こちら)、とても素晴らしいレスポンスを頂きました。お読み頂きました皆さん、本当にありがとうございました。
その記事の最後でも触れたように、ギター・アンプの進むべき道は、幾つもの可能性があると思います:
・100%モデリング: これは、もう既に始まっています。Axe-FXは回路全体をモデリングし、それを微調整したりコンポーネントの値を変更したりすることで、バーチャルに改造したり、新しいアンプを作ったりすることができると主張しています。
・よりスマートなチューブ・アンプ: Marshall AFD100やYJM100などは、よりクレバーな電子パワー・スケーリングにより、小ボリュームでもクランクアップしたトーンを実現できるようになっています。個人的には、モジュラーのコンセプト (Randallによる、そこそこ成功を収めている試みにも似たもの) にも期待しています。それにより、対応力が戻ってきます!
・その分類がより曖昧になったもの: 見事に細部を捉えたプリアンプ・モデルが本物のチューブ・パワーアンプへフィードされ、しかもパワー・スケーリングにより、それほど音量を上げなくても真のパワーアンプ・オーバードライブが得られるようなアンプを想像してみてください。これには私も興味を持っています。
今回は、その曖昧な境界線が本当に曖昧な製品を紹介していきましょう。
Line 6 DTシリーズを紹介
これはMr. Line 6の製品です。(楽器ブランドは、創業者にして発明を行なった人物の名に因んでいることが多いのは、ご存知ですよね? ジム・マーシャル、レオ・フェンダー、などなど。Line 6も、ついLine 6を設立した人の名前 (恐らくはロボットかもしれませんが) だと思ってしまうことがあります。さあ、雑談はこれくらいにして、レビューに戻りましょう。
DT25/50™ が特別なものである理由は?
DT25、DT50はコンフィギュレーション変更可能なアナログ・コンポーネント、ブティック・チューブ・アンプ・グールーであるラインホルド・ボグナーのデザインによるフル・アナログ・チューブ出力段、Line 6のHDモデリング・テクノロジーを分かりやすく視覚的にも美しいパッケージに収めた、とてもポータブルなアンプです。その成果として、タッチへの優れた反応と深みのあるトーン、ダイナミクスなどギグに必要な要素を備えた2チャンネル、4ボイス・デザインになっており、優れたトーンの自由度を備えています。
DT25/50はなぜハイブリッド・アンプ?
それには十分な理由があります。低出力アンプは、50Wや100Wのアンプと比較するとヘッドルームに制限があり、その“フィール”は常に小ささを意識させます。DT25/50は、プリアンプをパワフルなHDモデリングで提供することで、その問題を解決しています。プリアンプのパワー・サプライは、パワー管が使う必要のあるものに制限されず、その結果として小さなパッケージでも、よりビッグなサウンドが得られます。つまり100Wのトランスを持ち運ばずに、100Wアンプのトーンとフィールを手にすることができるのです。
また、ハイブリッド・アンプであるため、L6 LINK™ 経由での拡張も可能となり、DT25/50のフレキシブルなアナログ・パワー・アンプが、より多くのアンプやエフェクトとの相互作用を実現できます。
難しい用語を使わずに説明できないの?
では、Line 6 DTシリーズを、私なりに整理してみましょう:
・2チャンネルそれぞれに、内蔵されている4種類のHDプリアンプ・モデルから選んでプログラムできます。実際には“プログラム”というより、アンプ同様の機能するので、どのプリアンプ・モデルにするかを設定して、あとは普通のアンプのようにコントロールを設定するだけです。
・4種類のプリアンプ・モデルで、ベーシックなサウンドはカバーされます – Fender, Marhsall, Vox, Mesa.
・どちらの機種でもチャンネルをフットスイッチで切り替えられ、DT25の場合はリバーブもフットスイッチでオン/オフできます。
・Mr.ボグナーがデザインした、本物のチューブ・アンプを搭載。
・選択したアンプ・モデルによっては、負帰還ループの特性が魔法のように変更され、アンプ・モデルのダイナミクスやタッチ・センスが本物そっくりになるよう影響を与えます。
・Line 6 HD500に接続すると、HD500に収められている“全て”のプリアンプから、DTのパワーアンプへフィード可能となります。
・トランスフォーマー・タップのレコーディング出力 (キャビネット・シミュレーション付き) – パワーアンプのトーンをキャプチャーしながらも、ダイレクトにレコーディング可能。これは本当に素晴らしい! スタンバイ・モードで、サイレント・レコーディングも可能です。
じゃあSpider Valveみたいなもの?
それは違います。個人的にSpider Valve SV100をしばらく所有して、それでギグを行なったことがありますが、全く違うものです。
最も違うのは、SVではプリアンプとパワーアンプがフルにモデリングされており、チューブ・パワーアンプ・セクションは、基本的にはモデリング・トーンを実際の音にするためにに使われていました。SVのマスター・ボリュームを上げても、トーンには全く影響を与えません。
その一方、DTシリーズには本物のチューブ・パワーアンプが搭載されているので、マスター・ボリュームを持ち上げると本物のパワーアンプ・オーバードライブが得られます。Gearvolution Part 1 で触れたように、パワーアンプ・モデリングにはまだ向上の余地があると思います。だから、この部分は期待できますね!
それに、Spider Valveのアンプ・モデリング・テクノロジーは、基本的にはSpiderシリーズのアンプに由来しています。だから、DTと比較すると古いテクノロジーですし、肩を並べるほど優れたサウンドとは言えません。
さあ、出発!
先日、クライストチャーチへスラッシュとマイルス・ケネディのコンサートへ行った際、これはSamurai Reviewには最高の機会になると思いました。古いバンド友達がDT50 HeadをRandall XL quadで使っており、親切にもクリップ作成用にそのアンプを使わせてくれるというのです。私はAudix i5マイクをバックパックに詰め、南へ向かいました。
Randallのキャビネットをクローズド・マイキングして (素晴らしいサウンドでした!)、DT50に用意されている4種類のメイン・アンプ・トポロジーのデモを行いました。
クラスの切り替え
ここで、アンプのパワーをクラスAとクラスABを切り替えることについて触れておきましょう。テクニカルな部分について詳しく知りたい方は、アンプ・グールーの ランドール・スミス による詳しい記事 (英文) をお読みください。ここでは、私なりに簡単にクラスAとクラスABを解説しておきます:
・クラスA – Vox AC30のようなアンプで採用されています。ヘッドルームはそれほど大きくありませんが、非常にタッチへの反応がよく、ダイナミックに感じます。
・クラスAB – Fender/Marshall. よりクリーンなヘッドルーム、タイトかつビッグなベースですが、タッチへの反応はそれほど鋭くありません。
最初のボイシング
では、Topology 1 – Fenderから。(恐らくは著作権の関係で、Fenderとは呼ばれておらず、“クリーンなアメリカン・アンプ”などと表現されています)
まずはデフォルトのパワー・クラス (AB) で演奏し、それからクラスAへ切り替えました。これもDTアンプのクールな部分で、「このFenderのXアンプを、クラスAのパワー・ステージを通せたらな」というときに、それを実行できます。
私自身は、このアンプ・モデルにクラスAを使ったときのサウンドを非常に気に入りました。少しクリスピーなサウンドになり、高域は少し圧縮感が出て、騒々しさやトレブリーな感じが減った、素晴らしいサウンドになりました。聞いてみてください:
クランチ・ボイシング
次はMarshallのトポロジー。HD500に収められているParkアンプ・モデルをベースにしているようです。Marshallに最適なのかどうかはさておき、試してみましょう。ドライブを上げると、ハードに演奏したときに心地よいクランチーなサウンドが得られます。少し戻して、わずかにソフトに演奏すると、ダイナミックさが良い感じです。これはLes Paulに最適だと思い、ハニーバーストのGibson LP Standardを使ってみました。部屋はウィンドミル奏法を行うには狭すぎましたが、「ババ・オライリー」の特徴的なオープニング・コードも弾いてみました。
その一方で、私がクランクしたMarshallに対して持っているイメージと比較すると、もう少しドライブとクランチが欲しいと感じました。でも考えてみると、まだクランクしていません。そう、本物のチューブ・パワーアンプなので、思いっきり上げればパワーアンプのサチュレーションが聞けるのです。
隣の部屋には犬と子供がいるので、さすがにアンプをフルテンにするのは遠慮して、少しだけ控えめにしました。ドライブもかなり下げて、パワーアンプ・ドライブがどれくらい影響するのかをチェックしました。
嬉しいことにLes Paulから荒々しい雄叫びが得られ、同じモデルでマスターが低い状態と比較すると、わずかにボディと胴回りが充実していました。その一方で非常にタッチへの反応が敏感で、ピッキングのダイナミクスを調整することでクリーン・トーンも出すことができました。素晴らしい!
Voxy Lady
今度はAC30のモデル。ACの個性的なチャイムを見事に実現しており (Celestion Vintage 30をロードしたキャビネットが、そんなサウンドを生み出します)、ブライアン・メイのサウンドも再現します。これにはJEM7FPを再度使っており、勇敢さは私の好みよりも少ないですが、どんなサウンドかはお分かり頂けるでしょう。
ハイゲイン・チャンネル
これはTreadplateモデル、つまりMesa Boogie Dual Rectifierです。ハイゲインにするため、Suhr Aldrichハムバッカーのペアをレトロフィットした、クールなFernandes Ravelleを使用。長いあいだ、Line 6にDual Recのモデリングがあったらと思ってきたのですが、間違いではなかったようです。
結論と今後
読者はどう思ったか分かりませんが、私はとても感銘を受けました。実際のところ、非常に感銘を受けたので、DT25 Headをもう少し試せるよう、Rockshopの友人に頼みました。DT50よりずっとポータブルですが、とてもラウドにもできます! 実際のところ、私のニーズにはこのローワットのフォーマットの方が好みで、より現実的な音量でパワーアンプをオーバードライブできます。
この“本物のチューブ・パワーアンプ”についてじっくり考えてみると、弱点があると感じた方もいるでしょう。本物のチューブ・パワーアンプでオーバードライブを実現するにはボリュームを上げる必要があるので、優れたサウンドを得るには大音量が必要なのではないでしょうか? ローボリュームでも使えるモデリングのシグナルの意味が無いのでは?
それは確かにそうなんですが、Line 6は例によって、その回答を用意しています。
DT50のマスター・ノブを引っ張るか、DT25のバックにある小さなスイッチを使うと、マスター・ボリューム・ノブの下に小さな文字が光るのが分かると思います。それは… LOW VOLUMEモード!
このLOW VOLUMEモードは、どのような働きをするのでしょう?
私が理解したところでは、ローボリュームの場合、Line 6はパワーアンプをドライブしたトーンを得るのに苦労することを理解しており、HD500を使ったときと同様、完全にモデリングされたパワーアンプ・セクションになるということです。チューブ・パワーアンプのヘッドルームは限度に達するので、マスター・ノブへの変更はモデリングしたパワーアンプのボリュームだけに影響します。
この方法で動作させると、Spider Valveシリーズ同様 (のコンセプト) になりますが、テクノロジーが進化しているため、非常に優れたサウンドが生まれます! 実際のところ、本物のパワーアンプ・ディストーションかどうかを気にしなければ、HD500の音を出すには最高の方法かもしれません。
さらにHD500をL6 Link経由で統合し、新しいプリアンプを使って、そのプリアンプの前後にエフェクトを使ってみたりしましたが、DT + HDの組み合わせは、全てのルーティングの面倒を見てくれます! これはまた、次の機会に紹介しましょう!
Line 6 DTシリーズは、十分に4.5点に値します。このアンプを、とても気に入りました! モデリングが大好きで、でも“アンプ”のソリューションが必要だという場合、このアンプは最適です! ただ、本物のパワーアンプのドライブをまともなボリュームで実現するには、DT50よりもDT25をお薦めします。私もそうします! 今回の短い訪問で作ったクリップでは、まだDTのほんの一部しか紹介できていません。今度時間のあるときに、自分の新しいDT25アンプを使って、また紹介したいと思います。
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