製品レビュー
Technology Review: StageSource L3tパワード・スピーカー
Mr. Radiotoneことデイヴ・アーカリ氏が、Line 6が発表したばかりのスピーカー/ミキサー統合製品で、ギターとバンジョーを鳴らしてみました。
私はギグを行なうフルタイムのソロ・アーティストなので、Line 6の新しいStageSource L3tパワード・スピーカーをレビューする機会は、絶対に見逃せないものとなりました。
他の多くのソロ・シンガー/ソングライター達と同様、私も小規模なPAソリューションをいろいろと試した結果、HK Lucas SMARTシステムに落ち着いたところです。HKは素晴らしいサウンドで、私が使うには少しパワーが足りないのですが、とてもコンパクトです。最近は自分でPAを用意する必要はほとんど無くなりましたが、SMARTは保管も容易ですし、必要とあれば車の後ろに積み込んで出かけることもできます。
トライアンプ方式で自己完結した (しかも拡張可能な) Line 6の製品は、HKのシステムより価格は抑えられていますが、ずっとパワフルで、かつ軽量ですから、非常に興味深い提案だと思います。
製品が到着すると、様々な楽器と共にビレッジホールに持ち込んでテストを行う前に、まずは家の中で持ち運んでみました。
このユニットをフロア・モニターとして使用した場合にはスタンドとしても機能するサイド・ハンドルにより、L3tは簡単に持ち歩くことができます。26kg、高さ86cmなので羽のように軽いとは言えませんが、扱いにくいとまでは言えません。物理的なデザインと人間工学の面では満点だと言えるでしょう。
早速、手近にあったKavanjoピックアップ付きのバンジョーとボーカル・マイクを内蔵ミキサーに接続してみました。入力端子はXLR/フォーンのコンボ端子になっているので何でも接続することができ、2チャンネル・ミキサーはアクセス性も良く、見やすくレイアウトされています。
バンジョーを優れたサウンドで出すのは難しいのですが、そのままでも優れたサウンドが得られ、また自宅での低音量時の、ボーカル・サウンドのクオリティも十分なものでした。このことからL3tは、最小限のSRが必要で、スペースにも余裕が無いホームコンサートやカフェでのギグにも適していることが分かります。
自宅のサウンドはドライなので、空間による自然な残響の影響を受けずに、両チャンネルのモジュレーションとリバーブをチェックすることができました。モジュレーション・コントロールは、ダブラー/ショート・ディレイ・エフェクトのようなもので、ボーカルにかけるのが好きな人も、そうで無い人もいるでしょう (個人的には、それほど好きではありません)。リバーブは十分なクオリティを持っていますが、私の好みからすると、ちょっと短めだと感じました。どちらにしても、L3tを単体で使用する際には両エフェクトとも適切で、かつ有用な機能だと思います。Line 6のことですから、将来的にはオンラインやシステムの接続により、リバーブ設定のカスタマイズができるようになるかもしれません (このシステムが拡張可能であることにも触れておきましょう。複数のL3tスピーカーやL3sサブ、また近日発売予定のStageScapeミキサーを、Line 6独自のデジタル・ネットワーキング・テクノロジーにより簡単に接続できます)。
私はライブでは、それぞれHighlanderピエゾ (アコースティックなサウンド用) とハムバッカー (オーバードライブを使いたい場合) を装備した、2本のNational Resophonicギターを使用します。ステージ上ではアンプは使わず、デュアル・バルブのDamage Control Liquid Bluesペダルなどを搭載したエフェクト・ボード経由で全てをDIしています。
最初に、アコースティックなNationalでサウンドチェックを行いました。このピエゾはやかましいサウンドになることがあり、それは特に小規模なシステムでは取り除くのが難しいのですが、L3tのスウィープ可能なミッドのEQを使うと、わずかな時間で解決できました。シェルビングのハイ&ローEQノブを使って、わずかなボトムエンドのブーストとトレブルのカットを行えば、これで準備は完了です。
チャンネル1には、切り替え可能なアコースティック・モデリング機能も搭載されています。私のギターの場合は、これによってプラスの効果は得られませんでしたが、低価格なアコースティック・ピエゾ/ピックアップの場合は、とても役に立つ場合もあるでしょう。
座席数150席強程度のビレッジホールには、十分なパワーが得られました。オーディエンスのいる状態で、恐らくマスター・ボリュームを半分以上に上げると、音が大き過ぎるのではないでしょうか。
他のコンパクトなシステムを使った場合には、もう1本のNationalのハムバッカーから真空管オーバードライブを通した際にチャレンジが生まれます。大抵の場合、コンプレッションを使ってスピーカーを保護するのですが、L3tの場合は、この強烈なギターもうまく扱ってくれます。十分なボリュームが得られた状態でもリアのマスター・ボリュームの横にある”LIMIT” LEDがたまに点滅する程度で、出力されるサウンドは全く潰れたりしません。
次に、バンジョーと普通のアコースティック (アンダーサドル・ピエゾ搭載)、ソリッドボディのNationalを接続してみましたが、どれもほとんどEQを使わずに優れたサウンドが得られました。アコースティック・モデリング機能でエンハンスされるものは無かったので、オフのままにしました。
今度はフィードバックを起こすよう、ボリュームを上げてみました。なかなかフィードバックは起こりませんが、実際に起きた場合はフィードバック・サプレッサー (ミキサーの両チャンネルで独立してスイッチ可能で、リアパネルのメイン・ラインにも用意されています) が適切な仕事をして、トーンを変え過ぎることなく除去してくれました。
このL3tは素晴らしいパワーと自由度を持っています。EQの働きも非常に幅広く、アグレッシブに使うことも可能です。
細かいことを言えば、ピエゾのNationalを接続した場合には、内蔵ミキサーと追加機能によってサウンドとダイナミクスがわずかにカラーリングされるようにも感じました。しかし、外部ミキサー (コンパクトなBoseのデジタル・ミキサー) を使って単にパワード・スピーカーとして動作させた場合には、このL3tはナチュラルかつ透明で、非常に優れたサウンドでした。
このシステムは、コンパクトなサイズに様々な魅力が収められています。素晴らしいオールインワン・ソリューションであり、特にソロ・アーティストには最適です。10万円を少し超える金額にしては、非常にパワフルなシステムだと言えますし、期待するもの全てと、それ以上を実現しています。私は現在、自分のPAを所有していますが、もしそうでなければ、すぐにこのシステムを購入するでしょう。しかも、ペアで。
TECH SPECS
・デュアル10インチ、トライアンプ・スピーカー・システム
・周波数特性 (+/-3 dB): 47 kHz – 18 kHz
・最大SPL出力: 132 dB peak @ 1m (unweighted)
・指向特性: 100度 (水平) x 50度 (垂直)
・デジタル・ネットワーキング: L6 LINKインテリジェント・スピーカー・ネットワーキング・システム
・外形寸法: 312 (W) x 312 (D) x 861 (W) mm
・重量: 26.1 kg
PROS – プラスのポイント
・オールインワン・ソリューション
・パワフルなEQ
・優れたパワー対サイズ比
・拡張可能
CONS – マイナスのポイント
・内蔵エフェクト・パラメーターのコントロール無し
・統合ミキサーがサウンドをカラーリング
Reproduced by kind permission of PSNEurope (c) Intent Media London 2012, www.prosoundnewseurope.com. Main image (c) Dave Arcari 2012 www.davearcari.com
カテゴリー
最新記事
- DL4 MkII Tips 第7回 feat.西田修大 - 1スイッチ・ルーパーとクラシック・ルーパーを行き来する
- DL4 MkII Tips 第6回 feat.西田修大 - 「4つ目」のフットスイッチを使いこなす
- DL4 MkII Tips 第5回 feat.西田修大 - リバーブ+ディレイで現代的なアンビエンスを作る
- DL4 MkII Tips 第4回 feat.大橋英之 - Classic Looper ~ルーパー活用のススメ
- DL4 MkII Tips 第3回 feat.大橋英之 - EUCLIDEAN ~ユニークなコード・リフ
- DL4 MkII Tips 第2回 feat.大橋英之 - ELEPHANT MAN&HALL REVERB ~ウォームなアナログ・ディレイ&リバーブ
- DL4 MkII Tips 第1回 feat.大橋英之 - HARMONY ~無限に楽しめるディレイ
- soLi(ISAO&星野沙織)× Helix Floor/HX Stomp 2022/12/29 スペシャル・コンサート・レポート
- POD Go Artists - 武良 匠
- スティーヴ・ハウ(イエス)の尽きせぬ創造性を支えるLine 6 Helix Floor + Powercab 212 Plus