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バックステージとツアー: ジョニー・スターバック氏が30年に渡るローリング・ストーンズのローディ生活を語る (Part 2)

2012.02.09

By Line6Miller

バンドのローディやテックを務めるのは簡単なことではありません。史上最も偉大なロックロール・バンドのローディになるなど、考えるだけでも恐ろしいことですが、ジョニー・スターバック氏がやっているのは、まさにそれなのです。ジョニーは30年以上もローリング・ストーンズのローディとして世界を回っている人物であり、このLine 6ブログのためにインタビューできる機会が訪れたのには、本当にゾクゾクしました。私にとってローリング・ストーンズは最も好きなバンドのひとつですから、その裏方としての人生や、ストーンズのような神々しい存在とロードに出るのがどんな感じなのかを垣間見れるのを、とても楽しみにしていました。

このパート2では、興味深いストーリーや、現代の音楽業界でローディやテックになるためのTIPS、ローリング・ストーンズがこれまで使ってきたギターに関する洞察などがシェアされています。

まだ前回のブログをお読みでない方は、ぜひ こちら でチェックしてください。

Line 6のFacebook経由で質問をお送り頂いた皆さん、ありがとうございました。

ローディという職業で、最もグラマラスなのはどんな部分でしょう? そして、グラマラスでない部分を挙げるとしたら、それは何になりますか?

その2つの質問に答えるのは簡単だね。ショービジネスの世界にグラマラスなことなどないよ。ショービジネスの世界の外にいる人は、ショーを実現させるために誰もがハードワークや長時間の労働を行っていることを知らないので、そう認識しがちだけどね。それが裏方の我々だけでなく、スターも同様だよ。もちろん音楽のスターは、ロックスターや映画スターだらけのパーティやアワードショーに参加するから、それはグラマラスなのかもしれないな。でも、それは仕事の一部ではなく、仕事に付随する幸運な部分だ。ショービジネスの大半はハードワークと長時間労働だよ。だから、最初の質問の回答は“何もない”、2番目の質問の回答は“全てがそう”だね。


「その2つの質問に答えるのは簡単だね。ショービジネスの世界にグラマラスなことなどないよ。ショービジネスの世界の外にいる人は、ショーを実現させるために誰もがハードワークや長時間の労働を行っていることを知らないので、そう認識しがちだけどね」(Photo courtesy of The Keith Shrine

これまでに「いったいどうやって解決すればいいんだ?」というような問題や故障が起こったことはありますか?それは、どうやって解決しましたか?

マディソンスクエアガーデンは、恐らく世界で最も会場だと思うが、そこでのショーの中盤に、後ろのほうにいる人からもよく見えるよう、バンドがオーディエンスの中へ移動する小さなステージとして用意されていたBステージで3曲を演奏することになっていた。ロニー (ロン・ウッド) が「ザ・ラスト・タイム」のイントロを弾くんだが、アンプから何も聞こえなかった。演奏しているのに全くの無音だったんだ。ワイヤレスに問題があることは明白だったね。最高のプロであるキース (リチャーズ) は「リトル・レッド・ルースター」を弾き始めたが、ロニーのギターはまだ駄目だ。大袈裟だと思うかもしれないが、マディソンスクエアガーデンでローリング・ストーンズが演奏しているとなると、これは大事件だよ。

幸運にも私の手元にギターのケーブルがあったので、ステージに飛び乗って繋いだ。もちろん格好悪いから、そんなことはしたくないけどね。ロニーのワイヤレスがどうして動作しないのは分からなかったし、理由はどうあれ、すぐには解決できないから、ロニーはケーブルを使って演奏したんだ。ショーの後でBステージの機材をバラしているとき、ワイヤレスからステージ上の穴を通ってアンプへ繋がっているケーブルが、ワイヤレスの裏側で外れていることに気づいたんだ。事前にテストしたときには機能していたから、なぜそんなことが起こったのかは分からない。でも、バンドが理由を知りたがるとは思った。この失態は翌日の新聞にも書かれたよ。それぐらい明白だったね。

私は勇気を出してロニーのところに行き、自分のミスだと説明した。ロニーの反応は「キースに言っておけよ!」だったね。それをキースに説明して、お叱りを待っていたが、彼は笑って「そうか、じゃあもう二度と起こらないだろうな」と言ったよ。その通り、それからはショーの前に再度チェックするだけでなく、トリプルチェックするようになったんだ。

キースの楽屋を去ろうとしたとき、彼は自分を呼び止め、頭を振りながら「ジョニー、あれはマディソンスクエアガーデンで起こるべくして起こったことなのかな?」と言った。一度の失敗が与えた影響を考えると、きっとあの場所である必要があったのだろう。

キース・リチャーズの自伝「ライフ」ではギターのチューニングや特定のギターに関して語られていますが、アンプに関してはどうでしょう? アンプにも“キース”サウンドがあるのでしょうか? それとも、サウンドの秘密はテレキャスターと、独自のアタックにあるのでしょうか?

キール・リチャーズのサウンドはテレキャスターとアタックによるところが大きいが、アンプも重要だよ。すごく簡単に言うと、少年の頃に初めて聞いたアメリカのロックンロールはFenderのギターをFenderのアンプに通したものだった。それを気に入って、その後も変わっていない。彼の選んだアンプはFender Twinで、多数を所有しているよ。

キースは、初期にはすごくレアなFenderのギターを使っていましたね。それ以外には、どんなギターを持っているのでしょう?

キースはレアなFenderを数本持っているし、Gibsonも何本か持っているね。

Photo courtesy of The Keith Shrine

キースは、楽器やアンプ、その他の機材に関して、モダンなテクノロジーをどれくらい許容していますか? ビンテージのみですか?

キースのギターテックを担当しているピエールはエレクトロニクス・ラックの中に、FenderギターをFenderアンプへ通したサウンドに追加するための機材を幾つか用意している。例えば「サティスファクション」にファズトーンを加えるためにね。でも、その質問の答えは、基本的にはビンテージのみだよ。

ローディになりたい新人へのアドバイスをお願いします。

私が言える唯一のアドバイスは、自分が行ったことと全く同じだね。バンドのそばにいて、ギグだろうとリハだろうと、可能な限り手伝いをすることだ。最新の機材やテクノロジーを理解し、自分が必要とされるだけの知識を身に付けることだね。知識を付けた分だけ、他人に勝てる可能性も高くなる。

最近は、ローディといっても知識は同じではない。いまやスペシャリストだ。ギターテックやキーボードテック、それにドラムテックだっている。そういうポジションに就きたいなら、私とは違って、もちろん何かしら楽器を演奏できた方がいいだろうね。

私はいまも楽器を演奏しないが、ローディの仕事を始めたころは必要なかった。機材を運び、トラックを運転でき、あまり寝なくても大丈夫なら十分だった。本当のテクニカルな知識を持っている必要もなかった。でも今は違う。テクニカルな知識は、あればあるほどいいよ。

注:Line 6はローリング・ストーンズとの関連はありません。

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