TIPS/テクニック

ロックンロールの人間工学: スタジオ

ロックンロール・ドクター、Dr. リッキー・フィッシュマンはカリフォルニア州サンフランシスコをベースとするカイロプラクター兼ベテラン・ベース・プレイヤーであり、ミュージシャンが直面する問題の診察と治療を行なってきました。“ミュージシャンズ・カイロプラクター”として、機材の運搬による背中の痛みや、長時間の演奏による反復性ストレス障害などを数多く診断。彼自身とその哲学、ミュージシャンズ・カイロプラクティック・プロジェクトについてはDr. フィッシュマンのWebサイト をご覧ください。また、前回のブログ・ポスト「ロックンロールの人間工学: 腰椎の保護」も是非お読みください。

By Dr. Ricky Fishman

午前1時。最高傑作を生み出そうとDAWでのビート作りに没頭し、午後10時からMIDIの作業を行ってきました。肩に忍び寄る痛みにより、そろそろ立ち上がって動き回る時間だということが分かります。

巨大なコンソールによりかかり、48本のフェーダーのひとつに手を伸ばしてミックスの微調整をしていると腰に痛みを感じました。さあ、14時間に渡るセッションも、そろそろ終わりに近づきました。

現在のスタジオ・ワークは主にコンピューターの作業であり、ハイテクなワークステーションにおける人間工学は、エンジニアやプロデューサー、プレイヤーにも関係しています。

コンピューターの画面の前に座ってシーケンサーの作業に集中することは、本当に不自然な行為です。椅子に座り込み、腰と肩を丸めると、頭はモニターの方向へ突き出されます。これが腰や首へのストレスを生み出します。さらに、作業に熱中することで時間の感覚も失われてしまいます。心と身体が切り離されてしまうのです。

まずは椅子の問題から。10数万円もするアーロンチェアを購入する必要はありません。地元のオフィス家具屋で、スイベルと腰椎のサポート、アームレスト、高さと背中の角度を調整できる機能の付いたパッド入りの椅子を探してください。快適であればいいのです。次がモニターの位置です。常に正面の位置にあり、画面の中央が視覚の中心から10度以内に収まるようにしてください。作業中には腕がMIDIキーボードかコンピューター・キーボード、マウスのいずれかでサポートされるようにします。机の高さを調整して肘がおおよそ90度の角度になり、またできるだけ近い位置で作業できるようにしてください。そうしないと、腕に対するダメージがダイレクトに背中の上部へ伝わります。

休憩することも重要です。30-45分毎に立ち上がるように警告を出すソフトを使うのもいいでしょう。肩を後ろへ、次に前へ10回、回してから、5回深呼吸して、10回背中を反らします。数時間毎に外へ出て、ちょっと歩きましょう。5分間の運動でも血液の循環や覚醒、関節の固まりをほぐすのに役立ちます。痛みや不快さは、決してクリエイティブなプロセスに役立たないことを覚えておきましょう。

姿勢や運動について注意を払いましょう。長時間に渡る前傾や捻りは、背中や首の痛みを引き起こします。しかし正しい姿勢を維持するには、内部筋骨格によるサポートが必要です。つまり、エクササイズが重要です。体幹の強さが無ければ関節へ過大なストレスがかかります。ロックンロールなライフスタイルにはエクササイズは無縁だと考えるかもしれませんが、健康体であることが作業寿命を延ばし、そのクオリティを向上させます。基本的なストレッチや心肺機能の向上は、スタジオ内だけでも実践できます。ミニトランポリンやジムボール、フォームローラーとフロアがあれば十分です。

音楽制作ほど楽しいものはありませんし、スタジオは、それを創造できる素晴らしいワークショップです。でも、それが身体に及ぼす影響も理解しておきましょう。我々の身体は動かすようにデザインされており、そうしないと壊れてしまいます。幸運にも、ロックンロールは観客向けのスポーツではありません。臆病や大人しさとも無縁です。さあ、立ち上がって呼吸し、ダンスして、ロックンロールしましょう!

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