TIPS/テクニック

ロックンロールの人間工学: 腰椎の保護

Dr. リッキー・フィッシュマンは、カリフォルニア州サンフランシスコをベースとするカイロプラクター兼ベテラン・ベース・プレイヤーであり、ミュージシャンが直面する問題の診察と治療を行なってきました。“ミュージシャンズ・カイロプラクター”として、機材の運搬による背中の痛みや、長時間の演奏による反復性ストレス障害などを数多く診断。彼自身とその哲学、ミュージシャンズ・カイロプラクティック・プロジェクトについては Dr. フィッシュマンのWebサイト をご覧ください。

By Dr. Ricky Fishman

さあ、今晩のセカンド・セットの演奏中です。肩から下げたLes Paul® は、背後に置いた巨大な100Wの2×12コンボ・アンプからハードでソウルフルなサウンドを生み出します。でも、まさに完璧なノートに到達しようというときに腰に違和感を覚え、背骨に激しい痛みを感じたら、もうリードのことを考える余裕はないでしょう。しかもギグの後は、このアンプを車に積み込まなくていけないのです。

我々が経験する腰痛は、大抵はウェストにある腰の屈曲部が原因となっています。5 kg近いギターやベースの重さが背中にかかると、骨盤が中央から持ち上げられるため傍脊柱筋群が悲鳴を上げ、椎間板が危険に圧迫され、ダメージをコントロールしようと線維輪が引き延ばされます。神経が機械的に、また生化学的に圧迫を受けて、その圧力が痛みやしびれを招きます。深刻なダメージを受けた場合には、撃たれたような痛みが足にまで伝わることがもあります。

重要なのはコア

ロックンロールな人生を送るには、そうした事実に備えておく必要があります。こうした強烈なストレスから保護する必要があるのです。重要なのはコアです。35kgものハードケースを持ち上げるドラマーが、その腰にかかる負担を吸収できるのは、コアが強いからです。バランスのとれたコアの強さにより、ダメージは大幅に軽減されます。

しかし、これは問題の物理的な面だけであり、それほど明白でない別の問題も存在します。例えば、何時間もジャムを行う場合がそうです。心と体が別々になる“ゾーン”に入ると、自己は消え失せ体を超越してしまうので、もう痛みは感じません。でも心と一体になっているかどうかを問わず、体は動き続けます。肩から下げたLes Paulで、最高の気分でジャムを行なっているかもしれませんが、腰椎は悲鳴を上げ続けます。そしてギグが終わってから、その体にさらに負担がかけられたことを理解するのです。

ハーモニックなバランスの重要さ

ステージ上で音楽に没頭しているときも、心の意識への接点を維持するようにしましょう。心と体のトーナリティへ、ある程度は注意を払いましょう。音楽と体を同時に感じて、ハーモニーのバランスが取れた空間を視覚化するのです。そして、もし前屈みになっているのが問題であれば、真っ直ぐ立つようにします。少し背中を伸ばしましょう。オーディエンスも、それを賞賛する筈です。時間が長いショーの場合は、Les Paulは家に置いてSGを使いましょう。少なくともデュアン・オールマンには十分なギターですからね!

予防とメンテナンス

これまで紹介してきたことは、予防とメンテナンスです。でも、巨大なスピーカーを持ち上げたときに、背中に激痛が走り、足が燃えるようになったら、どうすればいいでしょう? すぐに作業を止めてください! 誰かに助けを求め、もう持ち上げたりしないことです。痛みがすぐに消えない場合は、そうした問題の診断と治療ができる開業医を訪ねてください。

演奏をするのは、それが好きだからで、だからこそ大抵の場合は運搬に伴う腰の痛みに耐えながら機材を自宅から車、スタジオやクラブへ、そして自宅まで持ち運びます。でもロックンロールな人生を選んだとは言っても、そうした問題の回避や管理ができないわけではありません。エクササイズやストレッチを行い、人間工学を理解して姿勢に十分な注意を払うことで体を保護し、ギターを初めて手にしてパワー・コードの弾き方を身に付けたときから、長く音楽生活を楽しむことができます。

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