POD HD

POD HDマルチエフェクト・プロセッサーのエフェクト解説: Multi-Head Delay

By Line 6 Miller

POD HD マルチエフェクト・プロセッサー がクラシックで素晴らしいディレイ・エフェクト・モデルを数多く搭載していることには、本当に驚かされます。これまで何度かに分けて、そうした素晴らしいディレイ・エフェクトを紹介してきました(Analog w/ModTube EchoとTape EchoAnalog Echo)。今回もその話題を続けましょう。

POD HD マルチエフェクト・プロセッサーに搭載されているMulti-Headディレイ・エフェクトは、至宝とされているRoland® RE-101 Space Echoにインスパイア*されたモデルです。

Rolandの歴史

ローランド株式会社は1972年、梯郁太郎氏によって設立されました。同社の設立前、氏はカケハシ無線という名前のリペアショップを経営しており、これが後にエース電子工業となります。当時、梯氏はギター・アンプやリズム・マシンなどの音楽機器をデザインしていました。1972年、梯氏は自ら創業した会社を退社すると、ローランドを設立しました。

その2年後、ローランドは広く知られるディレイ・エフェクト・シリーズとなるSpace Echoをリリース。このSpace EchoにはRE-101や著名なRE-201など、幾つかのモデルが用意されました。POD HD マルチエフェクト・プロセッサーのMulti-Head Delayエフェクトは、RE-101モデルにインスパイアされたモデルです。

マルチヘッド・ディレイとは?

Multi-Head Delayディレイ・モデルは、オリジナルのRE-101が入力されたオーディオ信号を磁気テープへ記録するディレイ・ユニットであることから名付けられました。その信号は数個の再生ヘッド(この場合は4個)によって再生されます。POD HD マルチエフェクト・プロセッサーでは、各再生ヘッドをオン/オフできるため、エコー・サウンドの膨大なコンビネーションが得られます。全部の再生ヘッドをオンにすれば、一定のレベルのディレイが減衰せずリピートするように設定できます。また、そのうちの1つのヘッド、例えばヘッド3だけをオフにすると、ヘッド1と2を通過する際には一定のレベルのディレイが得られますが、その後は減衰し、ヘッド4へ到達した際にまた再生されます。こうした設定を、タイム (音価でも設定可能) やフィードバック、ミックスなど、その他のパラメーターと組み合わせることで、クリエイティブにサウンドを作ることが可能になります。まさにディレイ・エフェクトの至宝ですね。

ここで紹介している全てのトーンはLine 6 Miller’s TonesにあるCustom Toneに用意されています。なお、POD HD300にはMulti-Head Delayモデルが搭載されていないため、POD HD300トーンは用意されていません。

» Missile Crisis

1992年、キング・ミサイルというバンドが『ハッピー・アワー』というタイトルのアルバムをリリースしました。このバンドは、シンガーのジョン・ホールが、パーティの夜の後、体の一部を失った、というような内容の、そこそこのヒット曲を出しています。まあ、詳しくはネットで検索してみてください。ここで紹介しているサウンドは、このブログのために別のトーンを作っているときに偶然発見したものです。シンプルなクランチ・アンプのサウンドと、Multi-Headディレイ・エフェクトならではのロング・ディレイが特徴です。アンプの前にはOverdriveを使い、4 Band Shift EQでサウンドをまとめています。とても似たサウンドが作れたと思いますし、リフをきちんと弾けば本当にそっくりです。

» Multi Duel

今度のトーンはシグナル・チェーン内で2つのディレイを使っているので、POD HD500 マルチエフェクト・プロセッサーでのみ機能します。各Multi-Head Delay内にある4つのヘッドのサウンドを、実際に聞き取ることができます。各ディレイでタイムがラジカルに異なっているので、奇妙でタイミングのズレたディレイ・エフェクトになります。

» Glassy

このトーンは、ガラスを割った時を思い起こさせるので、そういう名前にしました。その理由は恐らく、Class A-30 TBアンプ・モデルのドライブを100%にして、トレブルとプレゼンスのパラメーターもかなり高くしているからでしょう。様々なエフェクトを使っていますが、それほど極端なサウンドのものはありません。このアンプ・モデルに付き物のバズ (電源や蛍光灯などから音として拾ってしまったノイズ) を抑えるため、その前にノイズ・ゲートを入れ、Multi-Headディレイ・エフェクトの後ろで少し信号をブーストしています。最後に仕上げとして、グラフィックEQを軽く使いました。

» Ragga Drops

このブログでは初めての試みとして、レゲエ・トーンを作ってみました。Blackface Dbl Vibアンプ・モデルを使い、ドライブ・パラメーターはかなり抑え目にしてあります。このトーンには優れたサウンドのMulti-Headディレイさえあればよく、最初のヘッドだけを使っています。タイムとフィードバック、ミックスのパラメーターはどれも保守的な設定にしました。それだけです! シンプルなレゲエ・コードを弾いてみてください。きっと、思い描いた通りのサウンドが得られるでしょう。

次回のブログも、POD HD マルチエフェクト・プロセッサー に搭載されている、クラシックななディレイ・モデルを取り上げます。Binson EchoRecにインスパイア*されたEcho Platterディレイ・エフェクト・モデルは、ピンク・フロイドなど、伝説的なバンドで有名なディレイ・エフェクトです。では、次回をお楽しみに!

*各製品名は各社が所有する商標であり、Line 6との関連や協力関係はありません。他社の商標は、Line 6がサウンド・モデルの開発において研究したトーンとサウンドを識別する目的でのみ使用されています。

« 記事一覧に戻る
icon-arrow-up