POD HD
POD HDマルチエフェクト・プロセッサーのエフェクト解説: Analog Echo
By Line6Miller
先週のブログでは、ディレイ・エフェクトの歴史 と、ユニークなエコー効果を作り出すため、テープ式レコーディング・システムのテープ・ヘッドを使用したレコーディング・エンジニアのトリックがどのようにスタートしたかを簡単に紹介しました。こうした方法は確かに効果的ですが、とても手間のかかるものでした。そこで様々なメーカーが、同様の結果をより簡単に、かつ素早く生み出せるようなアナログ・システムの開発を始めました。
デジタル時代の夜明けと、低価格なパーツの登場、デジタル・シグナル・プロセッシング (DSP) の活用により、ディレイ・エフェクトは新たな時代へと突入しました。今や、アナログ・ペダルでは不可能だった方法でシグナルの操作が可能です。アンプ・モデリングとマルチエフェクト・ペダルの発明により、クラシックなアナログ・ディレイのエミュレートや、オリジナル機器では実現不可能だったパラメーターの追加までも行えるようになりました。
その好例が、POD® HDマルチエフェクト・ペダルに搭載されているAnalog Echoディレイ・モデルです。このモデルは、レアで探し求めている人も多いBoss® DM-2アナログ・ディレイ・ペダルにインスパイア*されたものです。Boss® DM-2は、ストアされたオーディオ・シグナルを、特定のクロック・サイクルによりコンデンサー上で次々に移動させるBBD (Bucket Brigade Delay) という方式を採用しており、これは一列に並んだ人達がバケツリレーをするのにも似ています。
Boss® DM-2には全部で3つのパラメーターが用意されています:
- Repeat Rate (フィードバック)
- Intensity (ミックス)
- Echo (ディレイ・タイム)
このペダルはウォームでソフトな感触で知られており、ディレイとしても、リバーブとしても使われてきました。また、このタイプのディレイは、ストレイキャッツ・トーンのような心地よいスラップバック・サウンドにも最適です。シン・リジィのゲイリー・ムーアやザ・カルトのビリー・ダフィーが使用していたことでも有名です。
POD HD マルチエフェクト・ペダルに収められているAnalog Echoモデルは、Boss® DM-2のコンセプトを推し進めたもので、Line 6がパラメーターを追加しています。もちろんフィードバックとミックス、ディレイ・タイムをコントロールできますが、ベースとトレブルの調整ができるのに加えて、ディレイ・タイムは最大2,000 msecまで設定でき、さらに全音符や2分音符、付点音符などのリズムでも設定可能。それによりエフェクトにデジタルなコントロールも追加され、とにかく操作の楽しいモデルに仕上がっています。
私はトラディショナルなタイプの人間なので、このエフェクトが得意としてきたサウンド、つまり素晴らしいスラップバックや、タイムを短くしたウォームなディレイ、リバーブなどを使うのが好きです。以下に、POD HD300/HD400とPOD HD500で設定した4種類のトーンを紹介しています。掲載している画像は、POD HD500用のPOD HD Editソフトウェアのものです。これらのトーンは、Line 6の無料トーン共有WebサイトであるCustomToneにアップロードしており、POD HD300/400用のバージョンも含まれています。以下から入手してください: Line6MillersTones
AnalogEchoGain1
シン・リジィのゲイリー・ムーアは、よくMarshall® JTM-45を使っていました。POD HDマルチエフェクト・プロセッサー には、このアンプをベース*としたモデルが搭載されており (“Brit J-45”という名称になっています)、Analog Echoディレイはこのモデルでデモするのが最適です。ここで使っているのは、新たにモデリングされたチャンネルとしてPOD用のファームウェア・バージョン1.31に搭載されたノーマル・チャンネルであり、ギターはデュアル・ハムバッカー・ピックアップのリア・ポジションを使用。POD HD500のミキサー設定は、左右に振り分けたものからフロント&センターにパン。Studio Direct出力モードを使い、スタジオグレードのヘッドフォンで設定を行ないました。
4×12 Greenback 25キャビネットがこのトーンにもたらすファズが大好きですし、J-45モデルはとにかく素晴らしいサウンドです。Analog Echoのディレイは比較的低めの200 msecに設定。このAnalog Echoによりトーンがとてもウォームになり、リバーブ的なフィーリングが追加されます。Feedbackは25%に設定。BassとTrebleのパラメーターはそれぞれ55%、Mixは35%に設定しています。
AnalogEchoGain2
この“AnalogEchoGain2”パッチは、先ほどの“AnalogEchoGain1”に似ていますが、4×12 Blackback 30キャビネットを使うことでファズの要素を減らし、より食い付きの良い感じになっています。また、アンプ・モデルのドライブを少し下げ、プレゼンスを完全にオフにして、EQを少し調整しています。アンプ・モデルのベース・パラメーターも少し調整しました。
AnalogEchoSlap
Analog Echoディレイ・モデルは、ストレイ・キャッツでもお馴染みの、ロカビリー的なスラップバック・タイプのエコーには最適です。このトーンでは、ハムバッカーを搭載した同じギターを使いました。Blackface Dbl Nrmアンプ・モデルを選び、POD HD500のミキサーはセンターにしました (シングル・トーン・パッチは大抵そうしています)。Analog Echoのパラメーターは、ディレイ・タイムを100 msec、フィードバックを30%、ミックスを30%にしています。ベース・パラメーターは少し下げて40%に、またトレブルは50%です。
AnalogEchoWarm
私はPOD HDマルチエフェクト・プロセッサーのGibtone 185アンプ・モデルが大好きです。1939 Gibson® EH-185をモデリング*した、とてもスウィートなサウンドであり、Analog Echoディレイ・エフェクトとも見事にマッチします。ここでも同じギター (ブリッジ・セクション) と出力モード、ミキサー設定を使っています。アンプのドライブを100%に上げているのは、この小さなアンプのブレークアップが大好きだからです。ディレイの設定は少し変更していて、ディレイは少し長めの250 msec、フィードバックも55%にしました。ベースは30%、トレブルは55%、ミックスは少し上げて35%にしています。
ぜひ積極的に実験して、その能力を確認してみてください。その可能性は、まさに無限です。次回はPOD HD マルチエフェクト・ペダル に搭載されている、Maestro® EP-1及びEP-3 Echoplexディレイ・ユニットをベース*としたTube Echo及びTape Echoモデルをチェックしましょう。その歴史にも簡単に触れつつ、具体的な使用方法を紹介します。では、また来週!
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